考え方――イメージをカタチに――ルネッサンスへ
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index(索引)外構例<芦屋市 2011-0210


(外構工事:山荘) 六甲山、2011-0211。
記憶の発掘と再発見。(→イメージ図へ) (→造園へ)


全景。向かって右から見る。



六甲山。
朝にはよく霧に出会う。
それが、面白かった。
出会うというよりも、
霧の世界へ入って行く感じだ。
登り始めると霧が現れてきて、
頂上近くまで来ると、
晴れて視界が広がる。

見下ろすと、
山々の中腹あたりで、
霧が棚引き上昇しながら、
大気の中へ吸い込まれてゆく。
このような情景は街中では見られない。
街は、
もはや、イミテーションワールドと化してしまった。





塗った壁面の色はデリケートである。
壁面の模様がうつる。
非常に微妙ではあるが、
湿度と気温の時間的変化に合わせて、
色と模様が刻々変る。
その場の空気が創る、芸術みたいなもの。
よく見ると、炎のようであったり、
煙や雲のようであったり、
波や河の様であったり。






「塗り壁」の上部輪郭線。なんと優雅で美しいことか。
何も隠さずありのままで、偽りがない。
まるで空中を漂う、天女の衣のようだ。輪郭の曲線に無理がないのだ。
直線でも円弧でもない、緩やかに規則正しく変化してゆく放物線。

地球上の物体はすべて重力の影響を受け、放物線はそれを描く。
雨や風などの自然の風化作業はその結果なのである。山や河のカタチがそうだ。
昔の神社仏閣の屋根の形状がそうだったし、江戸時代の代官のヘルメットがそうだった。
痛み劣化しないよう、重力と、雨の加速度に対して忠実に創られた。

このような、自然との生きた親和性。暮らしに偽りがない。
無理せず逆らわず、ありのままの自由なカタチ。生きている。
それは見る者に生き方を問いかける。美しく感じるのはそのためだ。





左の木製の柵は勝手口扉になってます。



手前中央の、なだらかな石積みから、
黄色い壁面を見ていると、かなり奥にあるような印象をい受けるが、
実際のその間の距離は、せいぜい、3cm程度しかないのである。
なぜこのような印象を受けるのかというと、
私達がそうした風景に慣れているからである。

日本列島は、山の多い島なのである。
だから地平線というのが無くて、
山々が人の住む平地を取り囲む。
この、山の頂きから見下ろすと、
平地に田んぼが広がり、その向こうにはこれを囲んで、
遠景としての、山々がそびえる。

この写真でいうと、前景としての石積み、
遠景としての壁面という具合になる。
そしてその間に、
谷や平野を連想してしまうのである。
あるいは前景としての「石積み」が、
それを暗示しているのである。


石積みのなだらかな輪郭線。
特に、下にいくほど緩やかに裾(スソ)が広がり、
壁面の基底部分と重なりながら消失して行く。
この石積の上部輪郭線は、絵画でいう遠近法なのである。
距離感というのが、そうした「線」だけで表わされる。

さらにまた、石積みの、荒っぽくごつごつした、迫るような形と色。
そして、それと対照的な、柔らかい、霞(かす)むようなクリーム色の壁面。
それらが一層、距離と奥行きを感じさせる。






正面左、木製の勝手口から見る。




物体の、三面(3次元)を曲線で構成すると、
それを見る位置と角度によって、
物体のカタチは様々に変化する。
そして、時の経過に従い変化する。
それが、日本の四季なのである。

いつ見ても、どこから見ても同じなのは、
大量生産された工業製品であって、
この人型ロボットの世界に、
職人の入る余地はありません。
正直に白状します。僕は面白くないのです。









下の画像の壁面に注目していただきたい。
その「」のみならず、
色の「模様」までが微妙に変化している。
これはその時々の空気の湿度や気温、
さらには、壁面自体の乾燥度にも影響されている。
例えば、夜半に降った雨が壁面の色を、
全体的に濃く見せていたりする。
それがまた、日中の乾燥によって薄くなってゆく。
(*色そのものが違うのは空気の「色温度」による)

壁面の色備考へ



壁面の色が、なぜにこうも気紛れなのかというと、
化学合成物=石油製品ではないということなのだ。
「水」をはじかずに、取り込んで保つのである。
その水の湿った色が、
壁面を濃い色に映しているのである。







石積み。園路を作っている。







雨が降っても、乾いても、湿っても、
いつも同じ色。
そんな色は自然界にないのである。
それが、見えないし感じなくなっている。
失われた感覚となってしまった。
それは、かつてこの地を生きた、
文化の記憶だったのである。





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